2016年3月22日ポールクルーグマン教授が、安倍首相らと会談した。
どんな内容を話したんだろう?と疑問におもっていた。日本のメディア発表を読んでいても内容がいまいちわからない。いつも通り日本のメディアには期待できないので調べていたら、なんとポールクルーグマン教授本人が「meeting with Japanese officals 22/3/16」というタイトルで、議事録を公表していた。そして、それを日本語に訳してくださっている方がおられた。
Paul Krugman: Meeting with Japanese officials, 22/3/16
What I said in Tokyo: https://t.co/5WgageyKOH
Aftermath (no, I don't enjoy this sort of thing): pic.twitter.com/MfV1HHxCTS
— Paul Krugman (@paulkrugman) March 26, 2016
ポール・クルーグマン教授 議事録 日本語訳 2016年3月22日
内容がおもしろすぎる。主な登場人物は、ポールクルーグマン教授、安倍首相、麻生財務大臣、菅官房長官など。特にページ中ほど安倍首相と討論に入ってからがおもしろい。なるほど、そういう風に現在の日本の問題を認識しているのかと。
私は経済に明るくないので、自分が理解していない点=明確にしなきゃいけない箇所をまとめる目的で、以下、関心のある部分を抜粋させていただきます。
クルーグマン:中国は暴発寸前、調整が大きな問題となる(非常に高い投資の経済を支え続けられない)
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私は京都に住んでいるのだけど、京都市中京区の地価は前年度比7.18%アップしている。2004年に45万5062円だった公示地価、基準地価の総平均(単位=平米)は、2015年は68万5750円と23万688円高くなっている。リーマンショック後の2011年59万3805円を基準にすると、9万1945円高くなっている。
理由は中国人投資家が投資対象として京都の物件を購入するからだそうだ。しかし、中国経済が爆発すると仮定すると、京都の地価も下がることが予想される。
安倍首相:そのころの私たちの議論はこういうものでした。ロケットは大気圏の外に出なくてはならない、と。つまり、日本経済をデフレから脱却させ浮揚させるための脱出速度を獲得する必要があり、我々はそのための十分な速度を求めているのだと。(引用)
そりゃ、ロケットで大気圏を抜けだすことに集中すればいいのに、一緒に増税なんかしちゃうからじゃないでしょうかと素人の私なんかは思ってしまいます。ロケット噴射しつつ、重りも一緒にくっつけるからマズイ。
アベノミクス+8%増税後、たしかに金融経済は刺激されたけど、実体経済は動かなかった。国民や企業に、お金を使いなさい。儲かるから借金してお金借りなさい。投資しなさいといっても無理があるように思います。だって不安だもん、可処分所得が減ってる印象があるから。結局、増税分で増えた税収と、国民の消費が鈍った分でプラスマイナスはどうなってるんでしょうか?
安倍首相:私たちは、累積債務を懸念しています。それが一つの不安の源となっています。これについてはどうすべきでしょうか? とはいえ、黒田総裁はマイナス金利の導入という政策を採り、日本の10年国債は目下マイナス金利に転じています。
疑問:日本政府のバランスシートはどこにある?
平成21年度末時点では1,019兆円の負債に対し、647兆円の資産。
http://www.mof.go.jp/faq/seimu/03.htm
疑問:国民(企業)、銀行、日銀、政府の関係は?
クルーグマン教授:債務があろうとも今こそ支出をという主張は、たいへん強力なものです。これは複数の理由から真なのであります。
1,財政による刺激策は、デフレ脱却の金融政策への一助として非常に重要です。金融一本でやるのは難しい
2,金利が非常に低い。低いどころか、日本における実質金利は、非常に長期の債券にいたるまでマイナスです。引き受けられるべき支出がある
3,安定した先進国が自国通貨で借入をしたならば、財政危機に至るまでは非常に長い道のりがある
もし誰かが「日本はギリシャみたいになる」と言ったならば、「どうしたらそうなるの」と聞き返すのみ
日本の実質金利は高すぎるのだということがあります。そこから脱出する方法は、持続的なプラスのインフレ率を達成することです。
私は2%以上であるべきだと考えます。その数字が2であるべきかどうかは別にして、ともかくそれ〔プラスのインフレ率〕を達成する必要があります。この目標と比較するならば、今後2、3年の予算収支がどうであるかというのは、ずっと重要性が低いのです。
疑問:インフレやハイパーインフレ、デフレとメディアが書く時、インフレ率はどうやって測っているのか?消費者物価指数(CPI)なのか、コアCPIなのかコアコアCPIなのか?それともGDPデフレーターなのか?
麻生財務大臣:日本の企業家たちを見てみましょう。彼らはデフレマインドに捕らわれています。マインドを切り替えて設備投資を始めるべきなのです。我々が求めているのはそのキッカケです。それが最大の懸案なのです
つまり、今の日本に必要なのは、GDP(民間最終消費支出、政府最終消費支出、国内総固定資本形成、在庫品増加、財貨・サービス、輸出入)のなかの「民間最終消費支出」を戦争をする以外の方法で増やすってことだろうか?素直に公共投資ではなぜだめなんだろうか?
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/menu.html
マイナス金利にしても、銀行がお金を貸したくても、結局、企業がお金を使ったら儲かると、と考えない限り借り入れしないとおもうんだけど。
安倍首相:日本について申し上げますと、2014年に、消費税が5%から8%に引き上げられました。それにともなう駆け込み需要がありました。そのすぐ後には、消費を落ち込ませる効果を目の当たりにすることとなりました。今もなおその影響が尾を引いています。
消費税増税が減速の原因だという認識はあったんですね。
クルーグマン教授:私の考えでは、ヨーロッパの問題は、ユーロの問題を超えたところに行ってしまいました。いまやヨーロッパでは、難民危機によって、経済問題は背景へ追いやられてしまったのです。シェンゲン協定、開かれた国境といったことがらにも危機を及ぼしています。
クルーグマン教授:難民問題は、社会的な不安のせいでとてつもない緊張を生み出すのですが、こう言ってもよいものならば、難民の面倒を見ることは、大きな財政刺激策となるほどのコストは実際にはかからないのです――なんだか奇妙な台詞ですが。瑣末な金額というわけではありませんが、そこまで大きくはならない。
クルーグマン教授:最後にもうひとつだけ、懸念すべき事柄として申し上げるべきかと存じます。二ヶ月後には、イギリスがEUを去る方へと投票が決するということは、大いに可能性があります。これは不確実性を大きくするものであり、世界経済の足をさらに引っ張ります。
現在の難民問題は、経済問題より大きい(やっかい&優先度が高い)ということでしょうか。ドイツは財政均衡主義なので、違う知性(信条)を持つ人たちなのですね。世界を統合しようという流れと、EUのように統合してみたけど問題が噴出したのち分裂に向かう流れ、これからどうなっていくんでしょう?
雑感1:うむ。いつも思うんだけど、私たちは理性的な判断ができないのではなく、メディアによって判断材料が隠されいてる、もしくは間違えた材料が与えられるから、全く経済のことがわからないままだし、的外れな批判や議論ばっかりすることになってるのではないでしょうか。(まず、まともな情報を得るのに手間がかかりすぎる、、、)
雑感2:今回の議事録を読んでわかったこと。首相すらも、財政均衡と財政出動という主張の対立があった場合、どちらが正しいか確信はないんだな。日本国内にもクルーグマン教授と同じ見解を示している方はおられるけれども、いままでは「いわゆるリフレ派」の考えを採用してきた。その考えで結果がでなかったものだから、外部(アメリカ)から権威呼んできて、結果でないんだけど、どうなってるんでしょう?ときいてるわけですね。
最後に、経済問題なんて、わたしには関係ない、ってかんじに考えてたんだけど、そうじゃない。
ただ平穏に暮らしたいだけなのですが、お金を稼ぐのも、保険にはいるのも、家を買う(賃貸含む)のもすべて、大きな流れ(マクロ?)に影響されてしまう。間違えた判断をしてしまって人のせいにしないためには、自分で正しい判断をしないといけない。
そのためには、多数の声に惑わされず、個人的にわからないところを地道に調べていくしかないんだなあ。面倒だけど、いままで知らなかったことがわかることを喜びとしてやっていくしかないと感じます(しかし、調べれば調べるほど、わからなくなっていくのですが、、、)
最後に訳をしていただいた方にあらためて感謝いたします。ありがとうございます。